…どれほど諸葛亮に同情的に観ても、魏延をつかわなかったことは誤謬であった。魏延に長安を急襲させれば、おそらく魏は皇帝以下が周章狼狽したであろう。たとえそこまでの敢行を命じなくても、先鋒は魏延にすべきであった。それもしなかったとなると、諸葛亮の旗鼓の才は、袁紹程度とみてよい。優柔不断であり、公孫瓚には強いが曹操には弱い兵略的欠点と似た短所をもっている。
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- 作者: 宮城谷昌光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/09/01
- メディア: 単行本
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この巻から諸葛亮の北伐が始まります。
それにしても宮城谷さんの諸葛亮の軍事に対する評価は辛い。
ただし、巻の後半では、将帥としての技量を身につけていく孔明も描かれているのですが。
確かに、終生魏延を用いなかったこと、馬謖を抜擢したこと、その馬謖に孔明自身が負うべき責任を擦り付けたことなど、避難すべき点は多い。
ただ第一次北伐に際して、魏延の策を用いて長安を急襲したとしても、その後長安を保ち得たかどうか。
孟達の翻意を促して上庸を取ったとしても、用武の地である荊州を保ち得たかどうか。
(実際に、苑から司馬懿が8日で達することができる地でもある。)
だから、長安以西の魏の北西部を刈り取り、蜀の版図を拡大していくという諸葛亮の戦略は間違いではないと思います。
それから、司令官としての孔明の資質に疑問があることは確かですが、撤退戦の上手さは評価してあげてもいい。
街亭を失ったあとですらも、無事に撤退しているわけだし、その撤退の上手さは逃げ上手の劉備をきちんと手本にしていたということだと思います。
なんてことを言う私も、きっと魏延から「怯」と罵られるに違いありません(笑)。