抜き書き第三巻。ようやく三国志の序章から本編へ、といった巻。
ーーあの拙劣な指揮にもかかわらず、凱旋将軍のようではないか。
と、張温をますます侮蔑した陶謙は、百官がそろった祝勝会がおこなわれたとき、
「酒をついでまわれ」
と、張温にいわれて、
「西方でもあなたはそのように坐して、諸将を死地にむかわせた。良将になるためには、ご自身で酒をつぐことをおぼえるべきです。
と、胸を剖くように自身のなかにたまっていたものを吐いた。
せめて、常に現場をまわることを怠ってはならぬ。
それにしても陶謙という人物、いわゆる三国志演義とは別の印象。
戦いのさなかでも先賢を追慕したのは曹操ひとりであるといっても過言ではない。こういう精神の風韻が、他の済時の才とは歴然とちがう。人格の中にある情報の質と量が違うといってもよい。
曹操を褒める文章は、今後もたくさん出てくる。
ところで曹操は後年この義挙について述懐している。それによると、当時挙兵した者は、兵が多ければよいと考えていたが、曹操は大軍にならぬように兵を減らした。なぜなら兵を多く集めて意気が盛んになり、強敵と戦うことは、禍いのはじめとなるからである。つまり制御しえない兵はかえって害となるということであろう。それが、五千しか兵が集まらなかったいいわけでないとすれば、武将としての声名がとぼしい曹操は、自分の将器をうぬぼれずに冷静にみていたことになる。
まずは適切な規模で経験を積む。自分の将器にうぬぼれない。
曹操でさえ、そうである。というよりも、曹操だからこそ自分を戒められたというべきか。
曹操から学ぶことは多い。
ーー
次は第四巻。ちょっと抜き書きの分量が増えます。
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