孔明の死の五年後、倭の邪馬台国女王卑弥呼の使者が魏に至った。魏の景初三年(二三九)のことで、この年に明帝曹叡は死んだ。
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(「諸葛孔明(下巻)」悲風多し)
- 作者: 陳舜臣
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この「諸葛孔明」は、かれこれ20年ちかく読み続けている本です。
少なくとも年に1回は読んでる。で、今年もやっぱりまた読んだ、というわけです。
たぶんに創作的要素の強い三国志演義にくらべて、この小説で描かれる諸葛亮孔明は誠実で真面目で地味な人です。
神の如き用兵の冴えをみせる天才軍師ではなく、
乱世において打つべき手を慎重に打っていく、
国や組織を維持、機能させるための方策をひとつひとつ積み重ねていく、
そういう政治家、宰相としての諸葛亮が描かれています。
実際、傭兵集団といった感の強かった劉備陣営を組織として編成し行政機能をもたせて領地を経営し国家として割拠鼎立させていく手腕にこそ、諸葛亮の本領があったのでしょう。
実は私は、この本を読むまで「三国志」を小説で読んだことがありませんでした。
つまりは人形劇や漫画でのみ知っていたというわけで、どこか遠い異国の昔の物語、として三国志を捉えていました。
実際、三国志演義は活劇過ぎて現実離れした面が多いし。
この小説を読んで、ひとつの真面目な生き方として諸葛亮を捉えることができました。
また、冒頭に引用した一節の通り、諸葛亮の生きた時代は魏志倭人伝より前の時代です。
女王卑弥呼は曹操や諸葛亮の名を聞いたことがあったのか。
邪馬台国における鬼道の源流は五斗米道にあったのか。
こういうことに想いを馳せると、歴史物はより一層面白い。