ぺーぺーぷーぷーな日々

Claris FileMaker と戯れる日々です。

板井孝壱郎先生による院内講演:事例を通して学ぶ臨床倫理

先日1月19日は、宮崎大学の板井孝壱郎 准教授(医学部 社会医学講座 生命・医療倫理学分野)を招いての院内講演。
既にうちの病院での講演も、5回目になるのだそうです。そうだったのかあ。
長いお付き合い、ありがとうございます。


今回のレジュメの冒頭には、1回目から先生が繰り返し話されていることが、虫食い形式で書かれていました。

「○○(sympathy)」と「○○(empathy)」の違いを理解し自分が「独善」に陥っていないかを一歩立ち止まって考え、自分の判断を他のスタッフと共有する「○○」ができること!


穴埋めは、板井先生の実際の講演でお確かめください(笑)。


今回は、題して「事例を通して学ぶ臨床倫理」。
ビデオで事例をみて、それについて検討してみる、という構成。
時間の関係もあって、検討は板井先生が実演するような形でした。

大まかな内容:経口摂取か経管栄養か


ホントにざっくりと、講演の内容を説明すると、まずビデオのテーマ(実話)は、


経口摂取を維持するか、経管栄養とするかの判断


というもので、ビデオを見た後の事例検討では、


4分割法(1医学的適応、2患者の意向、3QOL、4周囲の状況)


を用いて、板井先生が具体的に情報を整理しながら実演してくださいました。


他にも話の流れの中で、

  • 指導医や病棟医長の研修医に対する指導の様子や、
  • 患者さんの家族と情報を共有する、共感する、あるいは説得する上での注意点


など、その他様々、新しいお笑いネタを交えながら楽しく解説してくださいました。

今回の要点


以下、今回の講演を、自分なりの解釈としてメモ。
つまり我田引水だけど。


今回の要点は、

  • 倫理という問題を、具体的な技術に落とし込んでいく。


ということではなかったかと思います。
そしてそのためには、まず、

  • とにかく客観的事実を正確に積み上げること。
    • その過程で自分(医療者)の考え・思いと、本人(患者)の考えを混同しないこと。
    • 「独善」に陥らない。
  • 4分割法も情報を処理するための具体的な技術のひとつである。
  • 結局のところ、価値判断なんてものは、その後にしかこないんだろう。
情報を整理すること
  • 「事実」をしっかり積み重ねることができれば、段階的な対応方法の検討が可能になる。
  • 段階とか分岐点とか場合分けに気づくことができる。
  • 今回の問題も、情報を的確に処理・把握することで、経口か経管か、の2者択一の問題に陥らずに済む
  • つまり、倫理以前の問題として処理することが可能だ、と言えなくもない。
  • 経管栄養に到るまでには様々な工夫の余地がある
    • (キザミ、トロミ、ゼリー、嚥下訓練などなど、専門的な具体例はさておき)
  • それぞれの段階にわけて、具体的な技術として提供できることがないか、を順次検討していけばいい。
  • 本当に難しい倫理的な判断に直面する前に、前段階として、やれることをやっていく。
  • いきなり「最終判断をしよう」などと意気込む必要はない。
  • 「しっかりとしたルーチンワークに落としこんでいく」という、仕事全般において要求される思考方法は、ここでも有効だと思う。
  • 難しく考えるな、順番に潰していけばイイじゃないか、という感じ。
  • そういったことを経た上で、最終的に「2者択一の問題」が残った場合、そこでの判断は既に、どちらを選択しても「妥当」という評価を得やすいのかもしれない。
  • 適正な手続きや処理を経ずに、いきなり「最終判断をしよう」なんてことをやるから、後々、倫理的な問題が大きくなるってこともある
  • そういった手続きを経ない「最終判断」では、「妥当」という評価は得にくいと言える。

そういえば以前・・・。


今回の論点は、以前、CBELの夏期集中講座に参加した時の論点に似ている。
あのときは確か、、、。

結論からいくと、10組のグループのうち9組が「PEG造設支持」でした。
もっとも、「再度の説得を試みる」という回答もあったのですが、方向としてはPEG造設支持だったかと思われます。


これに対して、私の所属したグループだけが「造設すべきではない」という結論。
不思議と結論については全員一致でした。

高齢者へのPEG造設:CBEL受講回顧1 - ぺーぺーぷーぷーな日々


あの頃と比べて、私の思考回路は、少しは進歩しただろうか。。。