とある説明会に出席して、以下の文章を思い出した。
人類は、その後も多くの体系を創り出し、信じてきた。ほとんどの体系はうそっぱちをひそかな基礎とし、それがうそっぱちとは思えなくするためにその基礎の上に構築される体系はできるだけ精密であることを必要とし、そのことに人智の限りが尽くされた。
(司馬遼太郎 著 項羽と劉邦(上) (新潮文庫):沛の町の樹の下で より)
あらゆる研修先やコンサルタントから様々な理念や理論が職場に持ち込まれてくる。
とはいえ、いくら理念だ理論だビジョンだ目標設定だと言ったって、現実には業務を円滑に遂行するための技術やツールがなきゃ始まらない。
例えば、
- 患者の気持ちに寄り添う前に、しっかりした介護技術がなけりゃ病棟業務もままならない。
- 患者情報を共有せねばと言ったって、今の世の中でパソコンを2本指打法で使っているようじゃ、効率的なシステムなんて構築できない。
- 何をするにもしっかりとした収入を確保しなければ効率が悪い。
理念と技術とどっちが先かと言われれば私にとっては技術の方が大事で、初めから精緻で長たらしい理念を設定するよりも、小さくコンパクトに始めて円滑に業務を推進できる仕組みさえ構築できれば、長たらしい理念なんてものは後からその上に乗っけるだけでいいと思ってるし、少なくとも、理念なんてものは、今ある現実を見据えて設定すべきであって、高すぎて煩瑣な理想は現場をつぶすことにすらなりかねない。
引用ついでに、もう一つ。
流民のめざすところは、理想でも思想でもなく、食であった。大小の英雄豪傑というのは、流民から推戴された親分を指す。親分−英雄−は流民に食を保障することによって成立し、食を保障できないものは流民に殺されるか、身一つで逃亡せざるをえない。
(司馬遼太郎 著 項羽と劉邦(上) (新潮文庫):楚人の冠 より)
まずはパンを食わねば生きてはいけない。
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