社会革命の夢は潰えた。個の充実を求める時代である。
しかし、人間は生きていく上で、何らかのかたちで共同体に関わらざるを得ない。
いま思想が課題とすべきは、個人的な悩みや生きかたを共同体の在りかたと共に考える新たな視点である。
自由と共同性にこだわり、よりよき社会のかたちを求めたヘーゲル哲学を読み直す時が来た。
独善に陥らず普遍性を尊び、社会批判の眼を育んだヘーゲルの冒険的な思索を、現代に問い直す。
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上記は表紙の裏にのっている文章です。
なかなかカッコいい。
1995年の本だから、私がまだ大学生だった頃だ。
なぜ突然本棚から引っ張り出して読み始めたのかは自分でも分からない。
けど、好きな本であることは確かで過去に数回は読み直しています。
ちなみに私のヘーゲルに関する知識は基本的にこの本1冊だぞ。
私自身はヘーゲルに対して悪い印象があるわけではなくて、そもそものヘーゲルの考え方そのものは、とても柔軟で希望に燃えてるもの、という印象があります。
この本から得た印象が大きいんですけど。
時代精神という場所から考えるということは、まず、超歴史的な人間本性や、いつの時代にも惟一正当であるべき社会制度を想定しない、ということだ。つまり、理想を固定的で超歴史的なものとは考えないこと。
(第二章 愛は世界を救えるか P74)
それに、ヘーゲル的な
「全一なる精神の分裂と再統合」
なんてものを想像するときに私が思い浮かべるのはエヴァンゲリオンだったりします。
この本、題名が「大人のなりかた」となっていて、アレ?と思っちゃったりもしますが、
この本のテーマの一つは、「社会批判の流儀」。
このことがヘーゲルを通して語られています。
じつはヘーゲルは、こういうことをとことん考え抜いた人なのだ。<正義や理想を腐らせてしまわないために、どういう態度を取ればいいのか><社会を批判する基準は、どこに求められるべきなのか><ルールの本質とは何であり、どうやって変わっていくものなのか>。彼の「体系」の中核に込められているのは、じつは、そういう問なのである。
(序章 ヘーゲルってどんな人? P14)
文章も読みやすくて、私の好きな一冊です。
- 作者: 西研
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 1995/01/01
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