先週8日(土)の午後、同じ職場のソーシャルワーカーに連れられて某大学院の集中講義に潜り込みました。
講義を担当されていたのは、京都ノートルダム女子大学大学院人間文化研究科の村田久行教授。
もともとの専門はフッサール現象学だそうで、前日の1日目の授業で「対人援助に対する現象学的アプローチ」について講義されていたようです。
私がお邪魔した2日目は、主に、会話記録を基に支持的スーパービジョンの視点からの事例検討でした。
スーパービジョン(SV)を簡単に言うと「対人援助者を援助するための方法」といったところでしょうか。
そこには管理的機能、教育的機能、支持的機能という3つの機能があるらしい。
会話記録は、施設利用者とのトラブルを抱えた職員が、スーパーバイザー(援助者の援助者)に相談に来た際の会話記録、という設定。
そして、そこでの会話(アドバイス)が「援助者への援助」として成立しているかを検討しました。
スーパービジョンとして必要なのは、例えば今回の事例においては、
援助者の指向性の鉾先が、利用者との間に発生した「トラブルへの対処」という表象に向けられていることを修正し
- トラブルに至った利用者との関係性そのもの
- 利用者の抱えている悩みそのもの
- 利用者にとって施設職員が、どのような存在として、たち現れているか
という点に指向性を向けさせる(気づかせる)、ということになるらしい。
「表象」とか「そのもの」とか「指向性」などが現象学的で素敵です。
また、「援助者を援助する」ためには、会話の中で援助者の苦しみを和らげてあげる必要があり、
そのための具体的な会話の技術として「傾聴」、その中でも「会話を反復する」という技術が有効であるという話が示されました。
この「会話を反復する」というテクニックは、とても簡単な手段で、例を示すと、
- Aさん:私は、もう死んでしまいたい。
- Bさん:そうですか、死んでしまいたいんですね。
といった具合で、笑い話みたいなんだけど、傾聴によって相手の会話を引き出すという点では、実に有効な手段のようです。
そりゃ、体得するには場数が必要ではあるんだろうけど。
現場においては、やはり、こういった具体的な手段を教えてもらえると助かります。
村田先生の話にもあったように、しっかりとした「援助論」と、それを実践するための「技術」というのは本当に大事なんだな。
いくら、
- コミュニケーションが必要です。
- 患者さんの目線に立ちましょう。
などと観念的なアドバイスを貰っても、現実的な手段がなくてはどうにもならない。
午後1時から始まった講義は、夜9時前まで行われ、その後は先生を囲んで飲み会。
「私、フッサールのイデーンについては学生時代にウンタラカンタラ、、、」と酔っ払いながら話したような記憶がかすかに残っている。
翌日は2日酔い。でも競馬は、また的中した。
それにしても、時に独我論の嫌疑をかけられる現象学が、対人援助について説明するとなると、どういった理論構成になるんだろう。この点は、1日目に講義されているんだろうけど、また機会があったら潜り込みたい。
イデーン―純粋現象学と現象学的哲学のための諸構想 (1-1)
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