少しでも記憶が新鮮なうちに、受講記録を残しておきたいと思います。
まずは、最も時間をかけて行われた「倫理コンサルテーション(演習)」について。
グループに分かれて、倫理問題についての相談を扱う、というものでした。
概要
簡単に設定を説明しておくと
- 医師の説明(相談の依頼者)
- 経口摂取が困難なので、胃ろう造設(PEG)を行いたい。
- 末梢点滴では数週間で死亡すると思われる。
- 息子の嫁の説明
- 義母は食べるのがとても楽しみな人でした。
- 高齢なので、身体に傷をつけてまで医学的処置をして欲しくない。
- ただ、義母の実の娘でもなく、私だけで決めることにはためらいもある。
PEGについての説明は
胃ろう(胃瘻・PEG・ペグ)と栄養に関する情報を提供する|NPO法人PDN > PEG(胃ろう)・栄養入門|NPO法人PDN
検討方法、発表
- 症例検討シート(4分割表:1医学的適応、2患者の意向、3QOL、4周囲の状況)を用いたりして状況をまとめる
- 関連当事者(医師、家族、顧問弁護士)からの情報収集する
- 関連当事者役はCBELスタッフが演じてくれたのですが、状況設定が綿密で、我々の質問に対する回答を聞いていると、本当の当事者かと思われるほどの詳細ぶりでした。
- その後、グループディスカッションを行い、コンサルタントとしての助言をまとめ、発表。
各グループの結論:ほとんどのグループが「PEG造設する」
患者の意思確認、標準的医療としてのPEGの妥当性、代諾者の選定、適切なインフォームドコンセントなどなど、
様々な論点を検討しなければならないんですが、
結論からいくと、10組のグループのうち9組が「PEG造設支持」でした。
もっとも、「再度の説得を試みる」という回答もあったのですが、方向としてはPEG造設支持だったかと思われます。
これに対して、私の所属したグループだけが「造設すべきではない」という結論。
不思議と私たちのグループでは結論については全員一致でした。
理由としては、
- 本人の意思が確認できない
- 代諾者としては嫁が妥当
- 嫁の同意が無い以上、PEG造設すべきではない
といった理由を考えてみたのですが、これに対してCBELスタッフの方に指摘されたのが、「川崎協同病院事件、東京高裁平成19年2月28日判決」
判決文を見つけられなかったのですが、以下、現場からの医療改革推進協議会|TOP のサイトより引用。
患者の自己決定権からのアプローチについて、(1)尊厳死を許容する法律がない状況で、刑法202条による自殺関与行為及び同意殺人行為が違法とされていることとの矛盾のない説明ができないこと、(2)急に意識を失った者については、元々自己決定できないことになるし、家族による自己決定の代行は、必ずしも患者本人の気持ちに沿わない思惑が入り込む危険のあること、また患者の意思の推定というのは、フィクションにならざるを得ない面があり、意識を失う前の日常生活上の発言等は、そのような状況に至っていない段階での気楽なものととる余地が十分あることを指摘して、自己決定論による解釈の危うさや限界を述べ、・・・
解説(エ):医療崩壊を招く刑事介入
文章が長くなってしまったので、続きはまた次回のエントリーで。