今年読んだ本の中で特に印象に残った本です。
ワノフスキーは、スサノオを火山の巨大な噴火として解釈しています。ものすごい噴煙が空を覆い、太陽を隠してしまうほどの噴火を目撃した古代人の記憶がアマテラスの「岩戸隠れ」の神話の根幹にあるというのです。
古事記の記述ってなかなかに支離滅裂に思えて(笑)、なにを意味してるんだろうと思っていました。天孫降臨にしたって、どうして南九州なんだろうと思っていましたし。しかしそれには縄文時代から続く火山の記憶が内包されているのだ、という仮説には、なるほど、と思ってしまいました。例えば、天岩戸隠れを日食の暗示とするには、日食の時間そのものが短すぎ、それよりも大規模噴火による火山の冬と考えた方がしっくりくるように思えます。この仮説を提示されたのが、ロシアから日本に亡命してきたアレクサンドル・ワノフスキー(1967年逝去・93歳)という外国人だったことにも驚きます。
古事記の記述と火山、そして日本列島についての考察の中、古事記の記述が鹿児島、指宿と比定できることにも驚きました。
ニニギノミコトが日向国の高千穂峰に降り立った後、コノハナサクヤヒメと結婚するわけですが、
阿多津姫ことコノハナサクヤ姫が生まれ育ったとされる阿多には、「阿多カルデラ」という太古の巨大噴火の痕跡があります。阿多カルデラの一帯は、指宿火山群と命名されている火山の密集地で、美しい円錐形の成層火山である開聞岳のほか、漁港になっている山川港、観光名所の池田湖をはじめとして、火口のあとが湖、港の姿になっている「山ではない活火山」が並んでいます。
サクヤ姫になぞらえられた開聞岳は「薩摩富士」と称される美しい円錐形をした火山です。高さも一一〇〇メートルほどの桜島に対して、開聞岳は九〇〇メートルほどなので少しだけ小柄で、姉と妹にふさわしくみえます。
鹿児島、指宿も日本の神話の舞台のひとつであったのですか。
そしてまた、南薩の地域は古代において開聞岳の噴火による火砕流で甚大な被害があったんだよなあ。
さらに、卑弥呼やアマテラスから続く天皇の「祈り」についての考察も興味深い。
ワノフスキーが『火山と太陽』において提示しているユニークな論点は、日本列島における王権すなわち古代天皇の思想的な根元が、荒ぶる大地をなだめ鎮める祭祀的能力にあるとしていることです。
日本列島が古代から災害の多い地域であったことにも改めて気付かされます。
天皇陛下が被災地を見舞われるのは、古代から連綿と続く大地への祈りなのかもしれません。
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